#000. プロローグ

毎年　朝家を出て息の白さに気づくと
「あぁ、一年ぶりだなぁ・・・」と思う。
当たり前だ。
あたしが日本にいる限り
寒い冬は年に一度しかやってこない。

君との始まりも、こんな息の白くなる頃だった。
でもあの年は暖冬だったのと
・・・ほかにも理由はあっただろう。
今年ほど冬を寒くは感じなかった。


もう　振り返っても

どうしようもない

暖かった　あの冬


あたしは進むしかなくて
進んだ先にもう一度暖かさを感じることが大切だ。
過去は振り返っても過去なのだから。

この寒い冬に起こった
身の毛もよだつ　人生最悪の出来事を乗り越えるべく
あたしは相棒を得た。
昔からの夢だった。
相棒となるものには、無生物であっても名前をつけるタチだ。
最近の自分の中のトレンドは　ワインの名前

キャンティ　　　イタリアの赤ワインの名前がどうしてもつけたかった
ピエール　　　　バイト先のワインの中で一番かわいくて気に入った名前のワインが由来

今度の相棒は
そのNoir(ノワール)なBodyから　ピノでもいいかな
誕生日にあけてもらったスパークリングは　カバ
君と唯一一緒に買って飲んだワインは･･･
今流行のモデルさんと同じ名前だからやめとこう。

すぐには決まりそうにないから
またでもいいか。
これから長い付き合いになるんだから





あたしは
旅に出る
「君がいない世界」という
未知で、不安だらけの世界へ
相棒と一緒に・・・